耳鼻科の病気

簡単に耳鼻咽喉科の病気についてご説明します。

鼓膜閉鎖術について  〜人工鼓膜〜

鼓膜は、耳の奥にある、厚さ0.1mm、直径約1cmの透き通った薄い膜で、耳たぶから約3.5cmの深さにあります。この鼓膜が空気の振動を敏感に捕らえることで、私たちはいろいろな音を聞くことができます。

鼓膜を耳かきで破ってしまったり、中耳炎で耳から膿みが出たりすると、鼓膜に穴があき聞こえが悪くなってしまいます。ただ、このように鼓膜が破れてしまっても、鼓膜にできた穴は、普通、数日から数週間で自然に塞がって治る場合がほとんどです。しかし、中耳炎を何度も繰り返したり、破れた鼓膜の穴が大きかったりすると、破れた鼓膜はきれいに治らない場合が多く、鼓膜に開いた穴を一時的に塞ぐことで回復を促す必要があります。

このように破れてしまった鼓膜を覆って回復を促す時に使う薄い膜のことを、人工鼓膜と呼んでいます。というわけで、人工鼓膜は人工心臓などのような特殊な器械ではありません。清潔な薄い膜であれば何でも人工鼓膜として利用できます。実際に十数年前までは普通の紙を人工鼓膜として使っていました。ただ、最近では、やけどの傷を早く治す目的で発明された特殊な膜や医療用に開発された接着テープを人工鼓膜として使っています。

人工鼓膜による治療の実際は、鼓膜の大きさに丸く切った人工鼓膜を鼓膜の表面に貼り付けて鼓膜の穴を塞ぐだけです。数分で出来る簡単な治療ですから、鼓膜に穴が開いたと思ったら早めに耳鼻咽喉科医にご相談ください。

                      



いびきを治す  〜睡眠時無呼吸に注意〜

 
 日頃から自分のいびきに悩んだり、家族のいびきに悩まされている人は多いと思います。いびきをかいている人は良く眠っていると思いがちですが、いびきが体調不良や病気の原因になっていることがありますし、いびきは治すこともできます。そこで今回は、注意した方がよい「病的いびき」の見分け方と、いびきの治療法についてご説明します。

■眠って息が止まる

 疲れたり、お酒を飲んだ後、たまにかくいびきなら問題はありません。しかし、毎晩大いびきをかく、急にいびきをかくようになった、子供なのにいびきをかく、大いびきの後に突然止まるエンスト型のいびき、などには注意が必要です。特に睡眠中に何度も10秒以上にわたって息が止まる場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と言う病気が考えられるので医療機関での検査と治療が必要です。こういった「病的いびき」は中年男性に多く、中年男性の1〜3%の人に睡眠時無呼吸があると言われています。

■原因と体への影響

 いびきは呼吸する時におきる雑音で、鼻からのどが異常に狭くなると呼吸困難になり「病的いびき」がおきやすくなります。具体的には、蓄膿症・アレルギー性鼻炎・鼻中隔弯曲症などの鼻の病気、アデノイド肥大・扁桃肥大・軟口蓋の異常などの咽頭の病気、小顎症・口蓋裂のような形態異常、肥満や短頚などの体格、内分泌異常・脳疾患・神経疾患のような全身疾患、まれに咽頭癌などが原因となります。
いびきがひどく睡眠時無呼吸になると酸素不足を来し、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、不整脈などの誘因となります。また、不眠、昼間の居眠り、注意力低下などから仕事を解雇されたり、交通事故を引き起こすことすらあります。子供では、胸の骨が陥没変形する漏斗胸になったり、遅刻や学業不振の原因になることもあります。

■検査と治療法

まず外来で鼻からのどにかけて異常がないか診察します。次に1、2泊入院し睡眠中にいびき専用の検査機器を使い、呼吸回数、いびきの大きさ、血液の酸素量、脳波、心電図などを計測し、睡眠状態をビデオ記録して「病的いびき」かどうかを判定します。
いびきにとって肥満は大敵です。肥満の人は運動や食事療法で標準体重の20%超以下まで減量しましょう。また、寝る姿勢も大切ですから、枕や寝具を工夫して仰向けで寝ないようにします。軽いいびきでは口にテープを貼り鼻呼吸するだけでも効果があります。
最後に病院で行なう治療を紹介します。鼻やのどに異常がある場合には鼻腔整復術、口蓋扁桃摘出術、口蓋弓形成術(UPPP)など必要な手術を耳鼻科で行ないます。軽度から中等度のいびきでは、のどが広がる歯列プロテーゼを噛んで眠る治療法もあり歯科で行なえます。重症で睡眠時無呼吸がある場合には、鼻マスクを着け機械で呼吸を補助する経鼻的持続性陽圧呼吸(CPAP)療法があります。いびきがひどい方は専門医にご相談下さい。



ガマ腫について

ガマ腫は、舌下腺や周囲の小唾液腺から発生する袋状の腫瘤(嚢胞)で、外傷などにより唾液が周囲組織中に漏れ出した結果生じると考えられています。ガマ腫という病名は、その外観がカエルの喉の膨らみに似ていることに由来しています。舌の下の口腔底と呼ばれる部分に発生する柔らかい膨らみで、痛みはありません。中には粘りがある淡黄色透明の液体が溜まっています。嚢胞壁は薄いため自然に破れやすく、破れると腫れが一時的になくなりますが、再び腫れてきます。普通は口腔底だけが腫れていますが、まれに大きくなって顎の下や頚部まで腫れることもあります。

ガマ腫の治療法は手術が基本になります。一時的に腫れをとる手段としては穿刺吸引や切開がありますが治癒は期待できません。一般的な手術法には、袋全体を摘出してしまう方法(全摘出術)と、袋の上半分を切除し、後に残った嚢胞壁と口腔底の粘膜を縫合して排泄口を大きく造る方法(開窓術)があります。この他に、液体窒素で凍結壊死をはかる凍結療法や、凍結療法とレーザー療法とを併用する方法も試みられています。

ガマ腫は嚢胞壁が薄いため破れやすく再発することも多いため、摘出を容易にするために、色素を注入して嚢胞壁を染めてから摘出したり、嚢胞の内容液を吸引した後にパラフィンなどの硬化剤を注入して摘出することもあります。再発例では、ガマ腫の中に溜まる唾液を作り出す舌下腺などの唾液腺も含めて嚢胞を全摘出することが必要になります。



鼻中隔湾曲症について

左右の鼻のあな孔を分けている壁を「鼻の中の隔たり」と書いて「びちゅうかく鼻中隔」と呼んでいます。この鼻中隔は、正常の人でも左右どちらかに曲がっていますが、弯曲が僅かなため、鼻づまりを起こすことはありません。ところが、鼻中隔がひどく曲がっている人は、左右どちらかの鼻だけが年中つまってしまっていることがあります。このように鼻中隔が曲がっていることで起こる病気を「鼻中隔弯曲症」と呼びます。

みなさん、風邪をひいた時などには片方どちらかの鼻だけが詰まってしまう経験をお持ちだとと思いますが、鼻中隔弯曲症の場合には、年中、このように片方の鼻が詰まった状態になっていると考えてください。

鼻中隔弯曲症は鼻中隔の中にある軟骨が曲がっているために起こります。この鼻中隔軟骨の異常は、顔の骨が発育する思春期に、鼻中隔の中にある軟骨の成長と顔の骨の成長とが、アンバランスになるために起こります。また、鼻を打って鼻血が出たことがあったり骨折したことがあると鼻中隔の弯曲がひどくなる傾向があります。鼻中隔の構造は、粘膜と粘膜の間に軟骨がサンドイッチされた状態になっていますから、この粘膜の間に挟まっている軟骨だけを手術して取り除くことによって鼻中隔湾曲症を治療することができます。

鼻中隔弯曲症にアレルギー性鼻炎や蓄膿症を合併していると鼻づまりが起こりやすいので、鼻づまりが続く場合には早めに耳鼻咽喉科医にご相談ください。



浸出性中耳炎について

鼓膜の奥には「中耳」という、空気が入った「小さな空洞」があります。正常では空気が入っていて鼓膜が良く振動するようになっています。

風邪を引いたり、飛行機に乗って気圧が変わったりすると、急性中耳炎になってしまい、耳が痛んだり、聞こえなくなったり、高熱が出たりします。

急性中耳炎が治りきらず、空気が入っているべき「中耳」に水(滲出液)が溜まってしまうことがあります。このため、耳が聞こえないという症状が続いたり、耳が詰まった感じがとれない状態が、滲出性中耳炎です。

治療法として、通気療法、鼓膜切開、風船療法、鼓膜チューブ挿入術などがあります。






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